先祖を祀る

建碑式(けんぴしき)ならびに納骨法要(のうこつほうよう)

東光院萩の寺住職 村山廣甫

その意味と目的

新しいお墓が完成したら、遺骨を納める前に、お墓に魂を入れる開眼法要(入魂式)を行います。浄土真宗では、魂とか霊とかいった考え方はしないので、建碑式(建碑法要)といった言い方をしますが、法要の内容・目的は同じです。ここでは、納骨開眼と区別して、建碑式と呼ぶことにします。

建碑式の法要を営み、お墓を開眼することで、それまではただの石碑だったお墓に魂を入れ、ご先祖が永眠するのにふさわしい場所として、私たちが拝み敬う対象として、“お墓”としての宗教的機能を果たす場にするのです。新しいお墓の建碑式とともに、故人のご遺骨(胴骨)を納骨する場合には、納骨も含めて開眼します。

すでにご先祖が納骨されているお墓に、新亡のご遺骨を納めるときは、納骨法要を営んで開眼します。墓前へのお供物や作法に若干の違いはあるものの、実際に行うご供養の内容は、建碑式も納骨法要もかわりはありません。

建碑・納骨のお飾り

建碑式や納骨法要の場合、お墓に備えつけの花立てや燭台は使いません。白い布を敷いた台の上に、金襴の打敷を置き、その上に三具足か五具足と、お焼香の用意をします。多くは別に対となる供花を用意し、墓域を荘厳します。墓地のお供えとしては、法事一般のお供えのほか、お塩とお洗米を少量円空息しなければなりません。お塩は四隅にまいてその場を清め、洗米は餓鬼世界に苦しむ精霊にお施食するのです。お塩は腐敗を防ぎ殺菌力をもつところから浄化の作用があるとされ、お米は五穀の筆頭として最も貴重な食べ物とされたからです。

またお寺によっては、境内にある墓地の場合、鎮守神をもおまつりする意味で、お酒や鯛をお供えします。開眼法要につきものの「筆」と「硯」も用意しましょう。

建碑式は、お仏壇の開眼と同様、お祝い事です。お供えする法事の重餅(かさねもち)あるいは鏡餅は、紅白にします。建碑式に納骨法要が伴う場合も同様です。慶弔法要は慶事が優先するのです。お供えの金封も紅白の水引を使います。

既設のお墓への納骨には、開眼法要はあっても、お祝い事としての建碑式はありません。したがって、お供えするお餅も黄白です。献酒はあっても、鯛をお供えすることはありません。金封も法事一般の黄白の水引にします。

このお飾りやお供えは、菩提寺の境内墓地については、必ずお寺にお伺いし、お寺のほうで用意していただくほうがよいでしょう。大規模な民営の霊園では、管理事務所などで法要のための荘厳を請け負っていますし、公営の公園墓地では、出入りの石材店がお墓のカロート(地下納骨施設)へのご遺骨納めを兼ねて用意してくれるはずです。その際、お世話になった石材店の方に法要終了後に、“志”その他を包ませていただくようにしたいものです。

法要の実際

すでにお墓があって、四十九日の満中陰法要と同時に納骨法要を併修した場合を除き、百力日の卒哭忌法要は、ご遺骨は菩提寺に一時的に預骨されているので、お寺のご本堂で行われます。

  • 法要を終えた後、分骨する三角のご本骨は菩提寺に納め、遺族は四角い大きな箱に入ったお胴骨と卒哭忌納骨供養のお塔婆を持ち、参会者とともに墓地へ向かいます。
  • 建碑のときは、お墓の棹石(さおいし)に白いサラシが巻いてあります。四隅に塩をまき、カロートへの納骨が済むと棹石は施主によって除幕されます。サラシは大切にとっておいて、妊婦の「腹帯」として使う習わしもあります。カロートの底が土であるときは、お骨壷からご遺骨を出して白い木綿袋に納めて納骨します。そのとき、遺族がお写経した紙もいっしょに納めるとよいでしょう。
  • サラシを取った墓石にお塔婆を立てた後、菩提寺のお坊さまによって開眼の儀式が修されます。硯と筆を用いて入魂していただくのです。この瞬間に今まで単に墓石にすぎなかった施設が、大宇宙そのもの、「永遠の生命(いのち)」そのもののシンボルとなり、“お墓”を通してみ仏と出会う、聖なる霊域となるのです。
  • お坊さまによる読経が始まると施主・遺族・親族・友人・知人等参列者一同、墓前にお焼香して合掌、礼拝します。このとき、手桶の水をひしゃくにくんで、石塔に静かに三度そそぎます。これは水にはものを清める力があると信じられているところから、水垢離(みずごり)の禊(みそぎ)と同じくお墓を清めるという意味合いがあるのです。また、お墓に水をかけることで、新霊を浄化し、祖霊として昇華させるともいわれています。
  • 最後にお斎(とき)をして卒哭忌、建碑・納骨法要は終わります。建碑式は一生に一度あるかないかの希有の勝緑です。新たに開眼したお墓で、参列者一同が記念撮影しておくのもよいでしょう。なお、納骨法要のみのときも、サラシの除幕がないほかは、塩をまくことを含め同じです。ただしこの場合は、法要までにお坊さまに、石塔の性根(魂)を抜いていただいてから、故人のお戒名を彫り込んでおく必要があります。いずれにしても納骨には「火葬許可証」または「改葬許可証」を墓地の管理者(寺院では住職)に提出しなければなりません。
    建碑式・納骨法要は、故人をお墓へ納める大切な儀式です。施主および遺族は正式な喪服を、親戚・近親者なども正式な喪服か、準喪服を着服するのが望ましいでしょう。

諸経費

建碑式や納骨法要を営むには、お坊さまへのお布施(場合によっては、さらに別にお膳料、車馬料をお包みます)のほか、次の費用がかかります。

開眼供養に必要な仏具一式(焼香台や具足など)の拝借料、供花代、お供え物代(乾物、果物、野菜、お餅、お酒や鯛など)、石材店に支払う納骨の作業料、終わったあとのお斎(宴席)の費用などです。

菩提寺のご本堂や書院を使わせてもらったときは、当然それなりのお礼(借寺・荘厳料)をします。ごく内輪の身内で法要されるときは、お斎を省くこともあります。また、生前に自分のためのお墓を建碑するとき(「寿塚(じゅちょう)」という)などに、石材店に支払う納骨作業料は必要でないことはいうまでもありません。しかしこの場合でも、お世話になった石材店の人には、“志”その他(折詰とお酒など)を用意しておきたいものです。

合掌
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