先祖を祀る

初盆(はつぼん)の迎え方

東光院萩の寺住職 村山廣甫

初盆の決め方

故人となって初めてのお盆を「初盆(はつぼん)」もしくは「新盆(にいぼん)」と呼んでいます。故人は初七日から百力日まで、努力精進を続けながら、霊界で毎日を過ごしておられます。この故人が、心から待ち望んでいる休息日が、初盆です。

故人の精霊は、中陰中(初七日から七七日の満中陰まで)七日ごとの審判を受け、さらに、百ヵ日(卒哭忌(そっこうき))には再審されると考えられています。したがって基本的には、百カ日の卒哭忌(泣き納め)前にお盆を迎えた場合は、翌年が初盆となる計算です。最近では、日数的な問題、家や地域の事情でその年に営む例もあります。

しかしその場合でも、お盆が忌中にかかる場合は、翌年に回すべきでしょう。お盆には、「地獄の釜の蓋(ふた)が開(あ)く」とよくいわれるように、地獄の鬼も手をゆるめ、死者の霊もゆっくりと家へ帰ることが許されるのです。

初盆のおまつり──精霊棚供養

故人の精霊がが初めて里帰りするということで、初盆は特に丁重に営みたいものです。お仏壇とは別に、必ず精霊棚を設けて初盆の精霊をお迎えします(146ページ)。

通常の盆棚とは別に、新仏(しんぼとけ)の祭壇を用意することもあります。十三日(もしくは十二日)、門前でオガラを焚いて、生きのよい馬(キュウリ)を使いに立て、迎え火をして迎えられた初盆の精霊は、十五日(もしくは十六日)、牛(ナス)に揺られて送られるまで、この精霊棚でゆっくりおくつろぎになります。

お霊前には決まったお盆のお供えのほかに、故人の好きだった食べ物などもいろいろお供えしましょう。これらのお供え物は、お墓にも供えます。地域によっては、「掛け袋」といって、一升の米におひねり(百円玉程度)とワラジ、扇子を麻のひもで結んだものを、親戚が亡主の家に届け、それをまとめて喪主がお寺へ届ける風習があります。

また、初盆のときは、葬儀のときにお世話になった方や、親戚、知人、近親者をお招きし、お坊さまを迎えてご回向していただきます。招待された方は、「御仏前(ごぶつでん)」もしくは「御供物料(おくもつりょう)」を持参してお霊前に供えます。お坊さまには「御布施」を差し上げ、これに「御膳料」を添えるのが普通です。そのあと、参会者全員で、仏へのお供養の意味で、正式の食事(お斎(とき))をします。

ただし、お盆の時期には、菩提寺のお坊さまは、棚経中のためたいへん多忙です。年回法要のときのように、時間をかけることはしたくてもできないのが実情です。そのようなときは、お盆に営まれるお寺の行事、お施食会や精霊棚供養会にお参りしましょう。

菩提寺で営まれる精霊棚供養とは、お寺がお盆の期間中、初盆の精霊を中心に、檀信徒各家の寺位牌(本位牌)を精霊棚でご供養し、十五日(もしくは十六日)の夕方に、送り火を焚く行事です。このとき、灯籠流しのできない都市部では、新亡の白木位牌を、その火でお焚き込みします。初盆のご供養のときは、一般的に遺族は、男女とも正式喪服を着るのが習わしです。

初盆の白張り提灯

およそお盆の間は、霊(みたま)に自分の家を知ってもらうため、「盆提灯」を軒先に吊したり、精霊棚の両脇に飾って、夜には点灯するのが習いです。そのうちでも、特に初めての里帰りをされる新盆の霊のため、白張りの提灯を用意します。これを「初盆(新盆)提灯」といいます。白張り提灯は初盆のときにだけ使うもので、お盆が終わるとき送り火でお焚きしなければなりません。そこで最近では、あまり白張りにこだわらず、のちのお盆にも使うことのできる絵柄の付いた盆提灯を、初盆のときにもお飾りすることが多くなりました。

初盆には、近親者や故人と特に縁の深かった知人や友人が、絵柄文様の入った「盆提灯」を贈る例が多くみられます。しかし最近は、住宅スペースの関係で、あまりたくさんの提灯をいただいても飾る場所がありません。よく先方にうかがった上で、「御仏前」と表書きをした金封を贈り、喪主に購入していただくというのも一法でしょう。いずれにしても、贈るときは、お盆入りの一週間前までに届くように手配するのが礼儀です。

なお以前は、初盆提灯は近親者から、盆提灯はその他の親戚や知人から贈り、そのときには、相手の家紋を入れて一対にするのが正式でした。

また、すでに述べてきたように、浄土真宗には、霊魂が位牌に宿るとか、お盆に戻ってくるというような考え方はなく、特に他の宗派のような初盆の行事もありません。したがって、初盆提灯をお供えする習わしもありません。ご先祖を偲び、仏縁にふれる機会としてお盆の法要が営まれるのです。

合掌
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